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かくれんぼ <世界の幕開け>

程なく彼は警察に保護された。彼は身元について何も話さなかったため、児童保護施設――とはいってもほぼ孤児院――に送られることになった。

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言葉では表現出来ないほどのショックだったのだ。彼はもはやしゃべることもままならず、見ず知らずの大人達が考えた最善の案に促されるままだった。
涙は涸れ果て虚ろな瞳は心を映しはしない。辛うじて食事と多少の会話はできたので孤児院に行くことになったのだ。

孤児院は町外れの協会の修道院だった。
木々が生い茂り強い風に、ごおおお、と唸りをあげていた。次第に雨は降りだし雷が鳴りはじめた。それは彼の心情を表すかのように激しく鈍く淋しく悲しげに。

大好きな森、大嫌いな森。

彼は考えることをやめていた。

人が行き交うことで草の生えない道を連れ添い人と歩く。細長いその道は分かれ道を迎えた。ここを右に曲がると教会のようだ。

彼は身柄を受け渡され修道院の僧侶と数人の孤児達に紹介された。

しかし彼は名前が言えなかった。
困った修道士は、彼をトールと呼ぶことにした。

急に冷え込んせいか一人の子供がくしゃみをした。


雷雨はいっそう激しさを増していった。
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