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Side567

風が砂を巻き上げる。周りは一寸先とも見渡せない。
「黄丹!いるか!」
叫んだ声に反応したのは切り掛かってくる敵だった。
間一髪避けたがまた物凄い勢いで切り掛かってくる。
(皇来の者か…!)
見えぬ粉塵に上じて敵は猛攻を続けていたが曽於は全て防ぎきっていた。

「女はここにいるのか?」
突然敵が問い掛けてきた。
曽於は不意を突かれたが即座に体勢を立て直す。
「なんの事だ」
「摩羅は何でも受け入れる優しい世界だからその女も匿っているんだろう?」
皮肉った声と共に短剣と槍が弾け飛ぶ。
「何でも受け入れなどしていたらこうして戦ってなどいない!」
曽於の強いひと振りが相手を突き倒した。

「あー負けた降参だ」呆気ない降伏に曽於は呆れ返れる。
「敵とはいえその態度、戦士として誇りはないのか」
「戦士?はは、冗談、ただの流れ者だ。俺の全財産もってった女を探している。」
「お前ほどの手慣れがどうして」

「鈍い男だな、色目だ、ここまで言わすな」
風は徐々におさまりつつあった。男は砂を払いながら続けた。
「摩羅にいない証拠はないし皇来にもほとほと愛想が尽きはじめてきた頃だ、あっさり寝返ろうかな。」

「お前の様な奴は信用に足らん」

「固いおっさんだな、スパイとして情報も流せるだろうに」

「国を簡単に裏切る様な奴…」

遠くから曽於を呼ぶ声が彼の言葉を遮った。「隊長ー!無事ですか!」
「黄丹!私が簡単にやられるとでも言うのか」
黄丹と呼ばれた中肉中背の男は砂靄から姿を現した。
「とんでもない!ですが敵勢が迫っています、退却を!」
黄丹が辺りを見渡すともう一人の男が目に入った。「こいつは皇来の兵士!」
「まて戦意は喪失している。ましてやここで寝返るとほざくろくでなしだ、捨て置け」
「捕虜…にもなりますまいな。ですが隊長と互角とはいかずともかなりの剣の使い手の様ですが…」
「文無しなんだ、飯さえ食わしてくれれば働く、どこだってそうしてきた」

「何故皇来に愛想が尽きた?」
「あっちの方が優勢だし侵略は気が進まなくなってきた」
「戦争をゲームの様に…」
「私は気に入りました、隊長には柔軟さが足りません!」
「構わん、勝手にしろ!お前名前は?」

「常磐だ」

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