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かくれんぼ<ここだよ>

「石投げしないのか」
ドリスはしゃがんだトールを尻目に水切りを続けていた。

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とてもそんな気分じゃないと首を振る。

僕は…

「ぼ…くは…す…てられ…た…」

唐突に涙が溢れて認めたくない事を絞り出していた。

「僕は親に奉公に出されたけど奉公先で虐待にあって孤児院に引き取られたんだよ」

僕の話しは聞いてくれないの…

「聞いてるさ、僕は出来た人間じゃないから受け止めることは出来ない。同じ様なこと言って紛らわすしかない。気持ちの問題は結局は自分でなんとかするしかないんだ。だから石を投げてるんだよ。」

石は激しく跳ね軌跡を描きいずれは水中に埋もれてしまう。

「傷はなかったことにはならないけどいずれ痛みは鈍る。時々疼くけどね」

優しい言葉をかけて欲しいだろうけど君は一人だ。だから自分でどうするか決めなきゃならないんだよ。

「とは言ってもまだ僕たちは子供だからほとんどの事は大人が決めるけどね。肝心な事はやっぱ自分で決めなきゃダメなんだよ。」

これはマグノリアの役目なんだけどお前ユピテル人だって言ったろ。
実はユピテルから子供を捨てに来る親は少なくないんだ。何故かは知らないけど。
だから自分だけ不幸だなんて思っちゃダメだよ。

「御託は聞き飽きたよ!」

トールは突然立ち上がり石を投げた。物凄い勢いで近くの川辺に波紋を広げた。

「はは、その意気だよ」

トールとドリスは日暮まで石投げした。
トールはふて腐れた顔でドリスの袖をつかんでドリスに連れられて帰った。


それからと言うものトールは食事は万生で軽蔑の言葉には口は悪く言い返す様になり、時にはつかみ合い取っ組み合いのケンカになり、年長子供に並んで箒でしばかれた。周りの子供からは恐れられるようになった。

それを修道士達は暖かく見守った。


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